夏至を無事迎えて。そして地元長老による刺激
- 湯守(館主)
- 6月22日
- 読了時間: 4分
更新日:6月26日
6月21日、今年も無事に夏至を迎えました。夏至が私どもにとって特別な意味を持っているのには、近くの縄文遺跡であり世界文化遺産にも登録されている「大湯環状列石」(ストーンサークル)の存在に依ります。
大湯環状列石は、直径52メートルの「万座環状列石」と、直径44メートルの「野中堂環状列石」の2つの遺跡を中心に構成され、130m離れた二つの環状列石のそれぞれ中心を結んだ直線上に、夏至の日没方向が一致します。
大湯環状列石は縄文時代後期(約4,000年前)の大規模遺跡であり、墓地と儀礼や祭祀に関連した施設であったと考えられていますが、同時に上記のように日時計の役割もあったと考えられています。
また、現代のようにテレビもラジオもスマホも無い時代、わざわざ少し離れた川から大量に運ばれてきた大きくて重い「石英せんりょくひん岩」という石が配列されたことによって、磁場の変化を起こし、きっと現代人とは違う能力を持っていた当時の人々は、宇宙との交信をしていたのではないか、という説を唱える方もいらっしゃいます。
毎年この日、大湯ストーンサークルでは、「夏至祭」なるものが開催されています。有志の方々による合唱や音楽の演奏等が行われ、そして日没の時間に、集まった皆で夕日を見送る、というイベントで、毎年数百人が訪れます。(今年は150人程度の参加だった模様です)
今年はあいにくの曇り空でした。夕日の所在もおぼろげで、私どもも常連のゲストさんたちと共に日没時刻をめがけて駆けつけましたが、すでに退散される方も多かった程でした。しかし何はともあれ、昨年やはりこの場所で夕日を拝んだこの日からまた無事に1年が経ち、ほっとしたような感じが得られます。(添付の写真は昨年の日没間近の様子です)
以前のことではありますが、このイベントの元々の発起人であり、長らく携わられてきて、今ではもう引退されている地元の年輩の方のお話に、とても心を動かされましたのでご紹介させて頂きます。
氏は長年行政に携わられてこられた方で、人一倍の郷土愛を感じさせられる方です。まずはこの会を立ち上げた経緯について語られた事として、「夕日はどこにいても見られるものです。小さい子供が親や家族と一緒に見に来てくれますが、その子たちが成長して将来地元を離れ、どこか別の場所で暮らしていたとしても、そこで夕日を見るたびに、小さい時に大湯で皆で見た夕日の事を思い出してくれる筈ですし、地元のことを気にかけてくれるきっかけになります」と。単なる集客イベントではなく、将来を見据えた種まき行事の狙いがあったことに、感心させられてしまいました。
また、大湯と同じく巨石遺跡群として有名なイギリスのストーンヘンジも、その遺跡中心の重要な部分を結んだ直線上に、夏至の”日の出”方向が一致するそうで、毎年夏至の前夜から大きな祭典が開かれているそうです。祭典には、ここ大湯とは規模違いな人々(1万人規模だとか)が集まり、日の出を迎えるそうですが、氏曰く、お祭りの規模は今はまだ違えど、大湯ストーンサークルも負けじと大きく、古い遺跡ですから、ストーンヘンジと交流させたいとずっと希望してきたとのことです。
中でも、「特に未来を担う子供達どうしの交流が一番大切だと思います。イギリスの子供達を鹿角へ呼んで、夏至の日に太陽をみんなで見送り、そして、鹿角からイギリスへ子供達を行かせ、その送られたばかりの太陽を、ストーンヘンジで受け取らせる(迎える)のです。その記憶は、大人になってからも深く心に刻まれ、それが未来の平和や親交、両地域の発展につながってゆくはずです」と。
こんな素敵な企画話を年輩の方から聞かされたことに、その時は驚き、感動を覚えました。氏は、行政に提案してきたものの叶わなかったとの事ですが、行政に期待する話でも無いのかもしれません。今の時代は誰でも直接地球の裏側と繋がれますし、資金も例えばクラウドファンディングで調達できる可能性もあります。まぁ、言うは易し行うは難し。ですが、こんな浪漫のある氏の意思を大切にし、たとえそれが小さな規模で草の根からであっても、何かしらの形で実現してみたいプランだと考え始めています。今はネットで同時中継も出来る時代ですし。
感心ばかりしてるだけではいられません。当宿で何か専用プランが作られる日が来るかもしれません。
