甘い香りの漂う季節に、時を経て
- 湯守(館主)
- 6月7日
- 読了時間: 2分
この季節になると、里にほんのりと甘い香りが漂ってきます。山の方から柔らかな風が運んでくる香りです。山を見てみますと、いつの間にか白い花をつけた木々があちらこちらに見られます。この香りの元となっているのは、ニセアカシア(ハリエンジュ)の白い花であります。当宿の周辺の道路沿いや、木々の生えている空き地にもニセアカシアの木はよく見られ、場所によっては手を伸ばすとその白い花を摘み取ることができるほどです。
ニセアカシアは元々、外来種の木ではありました。上記の通り、今ではこの辺りの至る所でよく自生していますが、その背景にはこの地域の歴史が大きく関わっています。
ここ鹿角地域の発展は鉱山があってのことでした。その中でも、現在は隣町となる小坂町にあった小坂鉱山は、江戸時代から金・銀の採掘が始められ、明治時代には銀の生産高で日本一になったそうです。その後、銅や鉛の生産と続き、鉱山や町は繁栄を極めますが、一方で煙害が深刻化し、周囲の山はハゲ山と化したそうです。
明治時代後期から、対策として痩せた地でも育ちやすいニセアカシアが植林され始め、昭和中頃まで続けられたそうです。
数十年から百年近く経った現在、かくしてかつての鉱山近辺の山はニセアカシアの山林となり、少し離れた当宿のある大湯周辺でもその白い花々が多く見られるようになりました。きっと昔の人たちが見ていた色、感じていた匂いとはまた違った感覚を私たちは味わっているようです。
現在、小坂町では町の花がアカシアであり、毎年6月にはアカシア祭りが開催されます(今年は6月7日・8日でした)。町の名産にもなっているアカシアの蜂蜜は、他県からも養蜂家が多く集まって来るようです。
香りの高いニセアカシアのお花。当宿では天ぷらにしたり、発酵させたコンブチャを作ったりと活用させていただき、お客様へご提供させていただいています。(やがて里山保全の観点からニセアカシアの木の利用にも積極的になる時が来るかもしれません)
車でお越しになる方は、当宿に近づいて来ましたら、少し窓を開けてその空気を嗅いで見ていただければと思います。あるいは到着された際、少しお散歩をされてその匂いを味わってみてはいかがでしょうか。
