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6月の研修旅行、そして文人墨客に愛される宿を目指しての旅路

更新日:6月19日

 6月第二週の二日間、久々の研修旅行として、宮城県の青根温泉の宿に宿泊して参りました。宿は、湯元 不忘閣さんです。

 ご商売柄、年間ではあまり回数の多くない私どもの旅行ではありますが、同じくご商売柄、泊まってみたいお宿のリスト(GoogleMap上でマークしているだけですが)に控えているお宿は全国に数多ありまして、今回もそちらの中からの選定でした。つまり、かねてよりいつかは泊まってみたいと思っていたお宿です。

 今回こちらのお宿で学びたかったことは、お風呂とお料理、そして「文人たちに愛され続けた宿」としての、エッセンスといったところでしょうか。あとは、雑誌や写真で目にしていたその建築美にも憧れていたので、念願かなったりです。


 湯元 不忘閣さんは、歴代の伊達藩主の御用達のお湯と御殿(青根御殿)が元となっており、こちらを特に気に入った政宗が「不忘」と名付けたのが由来とのことです。私どもが訪れた当日はあいにくの雨天ではありましたが、晴れていればお部屋からは仙台の街の灯や牡鹿半島の山並みも遠望できるようで、政宗を始めとする伊達藩主もこちらへ来て政略や戦略を練ったりと、重要、機密事項の決定もなされていたとのこと。

 そして後の時代には、芥川龍之介をはじめ、川端康成、山本周五郎、与謝野晶子、田山花袋などの文豪たちが滞在して数々の作品を生み出した宿でもあるとのことです。

 これらの歴史にまつわる解説と登録有形文化財である青根御殿の見学ツアーが、毎朝朝食後に女将さんによって行われており、私どもも参加させていただきました。

 伊達藩時代からの貴重な資料や古物の数々が展示されており、併せて見学することもできます。(現存の青根御殿は昭和6年に復元再建されたものとのことです。訪問時も外装一部が修復工事中でした)


 温泉ですが、計6カ所のお風呂に入ることができます。中でも「蔵湯」は土蔵を改装して中にお風呂がある貸切風呂。「大湯」は400年ほど前から共同湯としても使われていた石の浴槽、「新湯」は美しい檜造りの湯小屋に建て替わっていますが、石の浴槽はやはり500年程の歴史のあるお風呂。

 いずれも貸切風呂であったり、大浴場でもお客様が数カ所へ分散される為、殆ど一人でゆっくりとお湯に浸かることができました。そして感じたことは、「殿様の気分」になったということです。これは豪華絢爛なお風呂ということではなく、歴史の重みがありそれでいて照明や修繕箇所もまるで入浴者をそういう気分にさせる為かと思わされるほどの、素朴だけど巧みな演出が施されているのではと感じた為です。


 お料理もyuzakaのお客様で泊まられたことのある方のお話などで予め聞いてはいましたが、どれも手の込んだお料理で、繊細な味付けで、美しい盛り付けです。今回は菜食のオーダーはしていませんが、お肉が多過ぎることは決してなく、旬の素材を大切に使われたお料理です。旅館料理で心配になる、肉・魚まかせでお惣菜は出来合い中心、ということは決してない、心のこもったお料理を頂けました。


 館内は古い建築を大切にされていて、華美な修繕は殆どなされていません。ですが、心休まる空間です。全体的な薄暗さも、数時間も滞在すれば却って落ち着きを与えられ、アットホーム感を得られてきます。一晩経てば、名残惜しさ離れ難さを感じる宿でした。まさに「不忘」なのでしょうか。


 さて冒頭の文人墨客に愛される宿とは一体。実際、文人の数も多いですし、愛された宿の数も全国色々あるようです。ただ、歴史の重みが滲み出ていて、華美な設備や過度なサービスはないかもしれませんが、いつも同じ宿の方が出てきてもてなしをしてくれ、好みや嗜好を分かってくれている、自宅のような居心地の良さではあっても、自宅とは違う空気感や景色であり、インスピレーションを与えられる、宿自体に"良い気"が漂っている(今風で言うパワースポットでしょうか?)、きっとそのような宿が多かったのかな、と何と無く感じています。


 お陰様でyuzakaもリピーターのお客様の比率が高くなって参りました。以前集計させて頂いたところ、年間通しておよそ6割のお客様が二回目以上のご利用で、これには大変嬉しく思っております。

 常連のお客様が、来る度に宿のどこかが改善されているという変化に気付かれ、楽しんでいただくことも大切にしておりますが、一方でいつも変わらぬ良さや居心地というのも大切にして、それらの絶妙な調和で進化をしていく必要があるのかもしれないと思っています。

 いずれにしろ私どもは(お休みが多く申し訳ありませんが)、これからも宿に立ち続けて皆様をお迎えしていくつもりです。お客様との近況報告などの会話を楽しみながら。

 そしていつか、当宿から何か世界の心が喜ぶもの、あるいは歴史に残る作品が生み出されるときが来ればという希望を持ちつつ、そんな宿を目指した旅路はまだ始まったばかりのようです。


400年の歴史がある「大湯」



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